惡の華

惡の華_1
©押見修造・講談社/「惡の華」製作委員会

惡の華を見た

ここ最近見た中で一番すごい作品だった

素直にアニメとは言い切れないような作品だ

ロトスコープという手法

惡の華_第一回_2
©押見修造・講談社/「惡の華」製作委員会

ロトスコープという手法で作られているというので、この作品を見だした

正直、最初、ロトスコープという手法については嫌いだった

アニメの良さはデフォルメで、それを害してまでアニメーターにトレスをさせるのは監督の自己満足でしかないと思っていたからだ

ただ、そういう気持ちもすぐに覚めた

この作品をロトスコープでやろうという判断をした監督?かはわからないが、すごいと思う

この作品は体操着を盗むという、一見特殊な状況の話だと見せかけておいて、実は、誰しもがやったことのある罪を表している

別に僕も、体操着を盗んだことがあるような人間ではないが、ただ、これまで生きていくうえで犯してきた罪と、それが罰せられるまでの間に流れる意心地の悪い時間を知っている

おそらくそれは誰しもにあることだろう

そしてこのアニメはその時間からくる意心地の悪さが魅力の一つだ

それを、アニメキャラでやってしまっては安っぽくなってしまう

中途半端な没入感でただただ謎に不快な作品になっていたのでは

それを回避する方法として、ロトスコープという手法は最高だと思った

実写でもない、アニメでもない、その微妙なポジションがこの原作にはあっていると初期に判断したのはすごいことだと思った

映像表現全般として感じたこと

物語後半に春日と仲村が走るシーンで、3Dが使われていたような気がする

惡の華が咲いているお花畑も明らかに3Dだ

背景は通常のアニメ同様、美術さんが描いたものだ

一部、写真を加工したものも使われていた

そして、キャラのロトスコープ

この作品は映像としての表現手法をものすごく幅広く使っている

川を流れる水なんて、おそらく動画で撮ったものを加工しているのだろう

ただ、そういうことをすると、3コマ打ちのアニメだと、ぬるぬる動きすぎて違和感が出てくる

かといって、コマを抜いて3コマ打ちに合わせても、いかにも動画を加工しました感が出て良くない

その点、この作品のキャラがロトスコープでぬるぬる動くような映像なので、そういう水の表現をしても大丈夫だと踏み、この表現になったのだろう

そういう水の表現一つとっても新しく、実験的だった

この作品の映像に関しては、ほかのアニメには類を見ないほど独創的で、かつ、それが作品全体のベクトルを邪魔していない

ロトスコープについて一点気になったこと

作画コスト軽減のために、人物があまり動いていないところではトレスするのをやめていた

それは良いのだが、いきなりピタっと止まる人物に少し違和感が出ていた

例えば、画面に手振れをつけてみたりすると、その違和感が少し軽減される気がするし、

撮影で少し線を揺らがせてみてもいい気がする

そういう工夫があれば、ちゃんと、キャラと背景が馴染んだまま最後まで映像として成立させられた気がする

脚本、ストーリーについて

脚本については、なかなかの鬱展開だった

まるで、庵野監督の式日を見ているような気分だった

ただ、おおむね違和感なく見ることができ、最後まで楽しめた

この物語は、些細なことからどんどんずるずる地獄にはまっていくという、一貫した柱がある

それを最後まで守り切って作っているので、ここまでどんよりとした雰囲気にすることができているのだろう

あとは、第十三回最後の見せ方について、

ものすごく断片的に話を伝えているのも良かった

あの見せ方ができるのは、この作品がとても前衛的だからだ

それに気づて、あるいは依存してこの見せ方にしたのだろう

その真意はわからないが、少なくとも良い感じには収まっていた

最終話詰め込みが問題視されているシャーロットも、あれくらいやれば表現の一つにでもなれたのにな、と思った

EDについて

この作品を見だしたのは、ロトスコープという技法ともう一つ、惡の華のEDがすごいことを以前から知っていたからだ

このEDはたしか、各話毎回1回は聞けるほど、たくさん流れていたが、それが億劫にならないくらい、良い曲だった

作品全体としての雰囲気が企画書段階からしっかり決まっていたので、こういうEDを作ることができたのかもしれない

花が咲いたよ、誰も見たことのない花が、咲くはずのない花が咲いていたよ

そういう歌詞の歌だが、

花が咲くという、自然現象は自分の気持ちの外で起こるものだ

それが惡の華なら、とても不気味に感じる

惡の華が自分の知らないところで咲いていたよ。というのをサーキットベンディング的な不気味さのある音声で淡々と歌っている

曲の内容は惡の華が咲いたことを報告するだけのもので、それを何回も繰り返している

その姿に人間味を感じないので、不気味だ

誰も見たことがない花が、咲くはずのない花

自分が前例のない状況に置かれていることをなんとなく醸し出しているので、それもまた不気味だ

そういう、絶妙な不気味さのトリガーを引くようなこのEDはやはりすごいし、それをこのアニメのEDとして本編にかぶせて見せてくるのはやはり良い見せ方だった

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