“雨を告げる漂流団地”を見た

blenderが使われているという情報を耳にしたことがあるので知ってはいたが、なんだかんだで見ていなかった

2時間ほどの作品で長いなとは思いつつも、絵はきれいだし、展開も面白かったし、作品に込められたテーマや、そこから感じたことまで含め、とても良い作品だった

建物と思い出

建物と思い出というテーマを強く感じた

何かを何かに例えて物語を作ると、難解で分かりづらくなってしまいがちだ

ただ、この作品は何を伝え、何が何のメタファーなのか、ものすごくわかりやすかった

僕は背景アーティストなので建物は大好きで、人の暮らしが実体化した建物という存在自体が好きだし、メカ的なかっこよさがあって好きだ

なので、この作品にも感動した

観覧車や団地が擬人化されて、物語に入り込んでくる

この作品は役目を終え、建物の墓場へ行く道中に迷い込んでしまった子供たちの物語だ

道中での展開も楽しかったし、最後、建物の墓場の描写も美しかった

この作品では一貫して、思い出がキラキラしたエフェクトのような形で表現されている

建物の墓場にはそんなキラキラした思い出がたくさんある

役目を終えた建物たちが思い出に囲まれている姿に感動した

子供の成長物語

メインキャラたちが小学生というのも上手だなと思った

作品のテーマは独り立ち、成長、親離れ、みたいな感じなので、まだ幼さが残るが大人になっていく年代ということで小学生になっているのだと思う

個人的には、小学生にしてはきれいすぎないか? と思った

もうちょっとあか抜けた、前歯が抜けたような、泥臭い感じ。クレヨンしんちゃん的な子供っぽいキャラデザ、振る舞いにしても良かった気がする

あとは、なつめの病みが深い感じがリアルで良かった

自信の複雑な家庭環境から、主人公のおじいちゃんの家で時間を過ごし、結果としてあの部屋と団地に依存している

依存しているのがなつめの未熟なところだ

それに対し、こうすけが小学生とは思えない正論でぶつかり、最後、なつめは思い出と決別する

全体的に小学生が大人びていたのは少し気になった

なつめと母親について

全てが終わり、現実世界に戻った後、なつめの母親が抱きしめに来るが、

この作品。最後まで母親が一番子供だった気がする

そもそも母親は登場していないので成長物語にはならないので当たり前だが、

自分勝手な両親のせいでこんな女の子に育ってしまいました。その子が成長し、冒険し、母親の元に帰ってきました。母親はやっぱり自分勝手です。

みたいな感じに思えた

つまり、元凶が解決できていないので、根本的には解決していない

終盤のシーンでの、女の子が「出前じゃなくって料理作ろう」みたいなセリフがおそらく、母親を物語的な完結に導くセリフなのだろうが、やはりそれだけだと完全に解決したことにはならないだろう

これは監督が意図しているのかはわからないが、

作中に何回か出てくる、なつめの夫婦喧嘩の回想シーンで、押し飛ばされたなつめを母親はかばおうとはせず、父親に詰め寄るようなそぶりを見せている

子供を考えている親だったら押し飛ばされた子供を先に庇うだろうが、それをしていない

つまり、この作品、親は悪。子供にとっての障壁。というような考えで描かれている気がした

小学生が大人びて描かれているというのも相まって、どうしても、”仕方のない親をあきらめる子供”。みたいなラストに見えてしまう

独自の解釈かもしれないが、個人的にはそういう終わり方がとても良いなと思った

家族の愛、生みの親、みたいなのは単なる幻想だし、実際のところはそんなのはアニメの中にいる都合の良いヒロインと同じく、現実には存在しない

クレヨンしんちゃんみたいな家族愛がテーマの作品も好きだし、憧れる

が、それは単なる憧れでしかなく、その点。都合の良いヒロインと大差ない

この作品は、幼稚な母親の元で育った依存体質な小学生ヒロインが成長して帰ってくる作品だ

心なしか、ラストの母親のシーンは、親が子供を心配しているのではなく、親が子供に依存している様子に見えた

そんなテーマを大衆向けに見れる形にしつつ、しっかりと感動させ、最後ちゃんと家に帰ってくる

それでいて絵的にも面白く、建物と思い出というもう一つのテーマとも絡めている

この作品はオリジナル作品で、監督もまだ若い

こういう作品が作れるのはすごいと思ったし、僕も早く自分の作品を作りたい。

その前に誰か僕にアニメの仕事をくれないかな、

と思った

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