久しぶりにしんちゃんの映画を見た
子供のころに一回見た以来で、お話の流れは何となく頭には残っていたが、改めて考えて見たらすごい物語だと思い、見てみた
案の定、すごい物語だった
しんちゃんの映画なので、ギャグ要素が多いのはもちろんだが、それと、ハードなメタ的設定を両立させているのがすごかった
君の名は、や、タイタニックなど、世の中の名作映画は脚本以前に、そのアイデアが出ている時点で成功が約束されている
最初のアイデアで最高到達点が決まり、それを邪魔せずに具体化できれば最高到達点へと至る。というのが映画という媒体だとも思うが、
その点、この、夕陽のカスカベボーイズも、アイデアの時点で大勝利している作品だと思った
メタ的要素
この映画は、映画の中に取り込まれてしまうという話だ
つまり、映画という媒体の中で映画を描いている
そういう仕掛けはエヴァだったりでもあった気もするが、
この作品はそれ以上に、観客を楽しませようという心意気が感じられた
もしかしたら僕らも映画に取り込まれてしまうんじゃないかという、異世界転生アニメの進化系みたいなことをしている
これを映画館で見た時の臨場感はすごかっただろうなと想像できるし、そういう体験を見る人にさせるこの映画のメタ的構成は、人を楽しませるというのに特化した素晴らしいものだった
そして、その構成を完ぺきに映画の展開として落とし込んでいる
最後、汽車で向かうとき、映画の中の住民は自分の死を知っている者もいたのかもしれない
映画が終わるということは、自分たちの自我も停止してしまうということだ
それを知ってもなお、口には出さず、カスカベの人たちをもとの世界に帰そうとするのは切なすぎる
クレしん最高峰のヒロインともいわれるつばきちゃんも、そういう切なさをはらんだ悲劇のヒロイン、不憫なヒロイン。みたいな、属性として強いものを持っているからこその人気なのかもしれない
導入から最後まで、演出が良い
映画館を見つけるというところからまずすごかった
日常と非日常が子供たちがやっと通れる隙間によってつながっている
春日部の郊外の人気のないところにある。とかではなく、
繁華街のビルの裏っ側にあるというのが、日常と非日常の隣接している感。もしかしたらその辺にもこういう場所があるのかもしれない。と観客に思わせている仕掛けになっていて、まずそこで高度だなと思った
人気がないというのを描くためには、まず先に人気を描かないといけない
最初の鬼ごっこのシーンでしんちゃんたちの世界観を観客に伝えつつ、歩行者などのカスカベの住民を同時に映している。
これによって、細い隙間を抜けた後の人気のなさを強調することに成功している。
あの空間の異様さは、周りには人気があるのに、そこにはないという、ギャップからくるのだろう
背景の色合いも、暖色系で、ホラーという感じでもないのだが、
どこか不穏な運びもあり、不気味というよりも寂しい、切ない感じに仕上がっている
誰もいないはずの映画館で映像が上映されているというのだけでも不気味で、切ない感じだが、これが、この作品の序章を描いた結果、自然とこうなってしまっている、というのもすごい
ここも、映画としてアイデアの勝利みたいなのがある気がするが、
アイデアが優秀な映画は、そのアイデアを脚色せず形にするだけでよい場面になってしまうものだ
あの映画に取り込まれるまでの流れがごくごく自然に形作られている時点で、本物の映画だな、という気がした
このペースで語るときりがないので割愛するが、映画に取り込まれた後の演出などもすごかった
全体的にすごく自然で、変な脚色もない、素材で勝負、みたいな映画だった
劇中映画について
劇中映画や椿ちゃんの考察はいろいろあるが、
個人的には、あの映画は”西部劇に取り込まれた女の子と博士が、西部劇を終わらせるためにジャスティスに立ち向かう”という映画なのだと思う
椿ちゃんは明らかにヒロイン顔だし、荒野をさまよっていたらジャスティスに拾われた、とも言っている
もともと映画にはそういう設定が組み込まれていたが、未完成になったりもして、完成を見ないまま、映画の世界が止まってしまった
だから、映画自体が春日部の人たちを取り込み始めてしまった。
最初に日が動き出したのが、博士が演説をし終わったタイミングだったことを考えると、あの博士の演説で行ったことが本来の筋書き、つまり、ジャスティスを倒すことだ
名前も、カスカベから来た人たちは日本人っぽい名前であるのは当たり前として、それ以外で日本人っぽい名前の椿ちゃんと博士は、映画の登場人物ということになる
カスカベ座にも帰ってきていなかったし、
椿ちゃんは過去のカスカベの住民という説もあるみたいだが、だったら最後、映画館にほかのカスカベの住民たちが一斉に帰ってきているような演出にはしていないだろう
数十年前に撮影されたが、未完成のままお蔵入りになるなり、何かしら事情があって怨念のようなものが宿った映画が、自らの設定でもある”人を取り込む”というのを行ってしまうようになった、
という、ある種の都市伝説、あるいはSCPみたいな映画だ
こんなにも凝った設定を、人を楽しませるように使いながら、クレヨンしんちゃんという世界観を守りつつ、90分の尺で納めて、かつギャグもしっかり盛り込んでくる。絵も劇伴もかっこいい、
という、個人的には全アニメ映画の中でも特に完ぺきに近いアニメだった
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