東京国際映画祭にて、ChaOを見た

東京国際映画祭にて、ChaOを見た

割と評判の悪いこの作品だが、個人的な感想としては、そこまで悪いか? という感じだった

確かに、もうちょっとできたのになというところもあった

が、酷評するほどではなかった

おそらく、オール ニード イズ キルでキャラクターの絵柄を変えてしまったというの余波がChaOにもう伝わっているのだろう

僕も、原作のある作品の絵柄をアニメ化に際して大きく変えてしまうのは良いことではないと思っている

アニメが原作を上回ってやっとこ始めて許される改変だと思う

そうでないのであれば、原作は原作者の作品なので、独自の解釈で変えるべきではないと思う

ただ、今回のチャオに関してはオリジナルアニメなのでキャラデザが云々という声は気にしすぎな気もした

確かに、事実、絵柄が万人受けしないのは認めざるを得ない

僕も、アーティスティックな映画とかだったらまだしも、ラブコメで絵柄を崩すのは、目的と手段が合致していない気がするのでそもそも得策ではない気がする

ただ、個人的には、個性的な絵柄も受け入れてくれる世の中になってほしいという気持ちが強い

量産型の作品は脳をあまり働かせないでも見れてしまうし、これからの時代だったら生成AIとかで簡単に作れてしまう

そうではなく、個性的で、だれが見てもこの人の作品だ、と、わかるくらいの個性が作品には必要であって、それをちゃんと評価できる世界であってほしいと思う

その点、チャオは個性的な絵柄と、にぎやかな場面転換など、特色あるものに仕上がっていた

カメラワーク、カメラアングル、画面レイアウト、場面のつなぎ方

カメラワークやカメラアングルに関しては一定の法則のようなものを感じつつ、場面のつなぎ方が独特で面白かった

ちゃんと考えて作っているんだな、という感じがした

僕はそういう、監督の意図を考えながら見るのが好きな人間なので、ずっと興味を持ってみることができたのだが、

ただ、世の中の消費者はそういう楽しみ方をしていなくて、当たり障りのない場面転換とわかりやすく、見やすく、整った画面レイアウトを好む

チャオに関しては、そういうカメラアングル等のカット割り、コンテ周りの点については、挑戦的で混乱すら招く点はありつつも、おおむね楽しくにぎやかな雰囲気に仕上がっていた

背景

背景はこの作品でも特に見ごたえのあるものだったかもしれない

舞台は上海で、美しい高層ビルと、雑多な街並みのコントラストをうまく表現していた

補色を意識しているのか、全体的にカラフルだが落ち着いた雰囲気で、明度、彩度、色相すべてでバランスをとっているような絵が多かった

アナログテイストなタッチも残しつつ、情報量のデフォルメ等もできていて、とにかく背景に関しては全体的にレベルの高いものだった

3DCG

3DCGについてはちょっと足りないなという印象だった

少なくとも、美術素材を張り込んでいるような作り方なので、ローポリゲームっぽい印象がどうしても残ってしまった

僕はblenderアーティストなのでどうしても考えてしまうが、マテリアルノードなど使ってカメラが動くに応じて変化する陰影を少し加えてあげるだけでも見た目がリッチになる

法線の編集なども行い、セルルックかつリッチな見た目にできればよい気がする

背景が書き込まれているのに若干もったいない気がした

絵柄について

これが一番不評の種になっていることなのだろう

僕も、絵柄については否定したい気持ちはないが、ただ、事実として、絵柄がメジャー寄りになっていれば映画の方向性も大きく変わってくると思った

今回の映画のルックにこの個性的なキャラデザはうまくマッチしていると思った

が、そのマッチしている状態自体がすでにアート寄りの映画になっていて、メジャーでやることではない気がした

なんとなく、海外にありそうな絵柄だ

もう少し大衆に寄り添う、海獣の子供くらいの絵柄になっていたら評価も変わっていたと思う

ストーリーについて

個人的に一番気になったのはストーリーの面だ

この作品は40分程度のショートアニメーションでなら成立するが、劇場長編アニメーションでは成立しない構成の物語な気がした

昔話として語られる構成自体は面白いとは思ったが、

ただ、これにより、物語のオチが、昔話中のクライマックスではなく、昔話をしている船上でのクライマックス、つまり、チャオとその子供たちが登場した瞬間になってしまっている

昔話を語るという構成にしなければ少しは長編アニメーション寄りの構成になった気がするのだが、そこにフレームをかけてしまったおかげで、物語の歩幅が一気に小さくなってしまった印象だ

歩幅が小さくなった結果、クライマックスの規模と映画の尺のバランスが崩れてしまった

あとは、そもそも、なぜ上海なのかもよくわからなかった

例えば、詩季織々という、同じく上海を舞台にしたオムニバスアニメ映画があるが、

あれは確か、中国のしきたりや伝統をテーマに、日常の出来事を描いていた

そういう作品は中国でやる意味があるのだが、チャオに関しては、中国という要素だけが妙にふわふわ浮いていた

物語に直接干渉したのは如意棒だけだったように思える

極論、海があればどこでもよいのではとも思えた

僕だったら、日本の離島とかにしてしまうかもしれない

日本の離島で、人魚姫は基本人間の姿になっていて、かつ、人魚姫が魚になっているときの姿は本当に大きな魚のような、擬人化要素ゼロの見た目にする

なんだか典型的すぎて、もしかしたら、そういう作品は既に存在するのかもしれないが、そっちのほうが万人受けもするし、ラブコメとして没頭できる

全体を通しての感想

確かによくない点もありつつも、正直、予想を上回るような映画なんてほとんどないし、大半の作品には惜しい部分はある

その点、チャオはだいぶ挑戦的だったし、それでいて作画は美しく、作品として形になっているので、挑戦の難易度と完成度を比べれば総じていうとよい作品だと思った

背景も作画も美しいので、それを鑑賞する楽しさはある

あとは、やはりハッピーエンドなので、楽しい気持ちで見ることができた

言うほど悪い作品でもなく、楽しめる作品だった気がする

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