例えば、シャイニングのホテルの間取りには、現実的にはあり得ないものが含まれている
あの作品はホラー映画の中で一番好きなだけでなく、全映画の中でもトップレベルに好きな映画だ
最初から最後まで漂う不気味な感じはしょせんは画面の中の出来事だという絶対の安心さえも霞んでくるような不気味さがある
その違和感の理由に、あり得ない間取りというのがある
実際は壁にめり込んであり得ない場所にあるトイレや、
壁の向こうには空間が無いはずなのにたくさん並んでいるドアなど、
潜在的な違和感の積み重ねで、あの不気味な感じを演出している
そんなの気づけるはずがない、言われないと気づかれないんだから意味ないよ!
という考えもあるかもしれないが、それは違う
というか、言われないでも気づける違和感は単なる作画崩壊や設定崩壊なので避けるべきだ
大切なのは、言われないと気づかないレベルだけど言われれば確かに変だとなる破綻だ
確実にそういった違和感は見る人の深層意識に働きかけ、奥深い体験を提供する
ここで、自分の作品の話になってしまうが……、




僕の初期の作品。まだフォトバッシュをやっていたころの作品で決まって心がけていたことがある
それは、頭上に何かを映り込ませることだ
陸橋や歩道橋、頭上にある建物など、決まって何かを少しだけ映り込ませるように配慮していた
それをすることにより、これらの街の仰々しい感じを表現している
画面に占める割合としてはそこまで大きいモチーフではないものの、上に少しだけ物体が映り込んでいるだけで、この空間への没入感が驚くほど変わってくる
こういうことも、言われないと気づかない表現の一つだ
ただ、それに気づかなくても、確実に見る人にとっては上に何かあるという、仰々しい空間にいるときと同じ感想を抱かせることができる
そして、そういう見せ方は今でも行っている

↑の例は自主制作の例だ
先ほどのフォトバッシュのように、直接的にものを映り込ませて上に何かある感を出すのではなく、影を落とすことによって何かある感を醸し出している
たぶん、この画面を見た人は、何か巨大な塊のような街の中にいるような印象を得ると思う
ロボが進む通りには巨大な影が落ちているが、それはつまり、この頭上に物があるということを示している
ただ、この画面には頭上の物なんて映っていないし、影が落ちているというのも、言われない限りはわざわざ意識するようなものでもない
それでも見る人は確かに、上に何かある感を感じ取ってくれる
これが、潜在的な情報操作だ
シャイニングの場合は、わざわざ図面で書き起こしてやっと気づくレベルの間取りの不調和が、言語化できない違和感となって積み重なっていく
角を右に曲がって、右に曲がって、右に曲がって、右に曲がって……、
とすると本当は最初の場所に戻ってくるはずなのに戻ってきていないだとか、
そういう潜在的な違和感は見る人に不気味さとなって作用する
ある種のデフォルメと同じなのかもしれない
別に、ホラー映画じゃなくてもこのテクニックは使える
空間を使ってそういうことを伝えるのは難しくはない
現にこの記事で扱ったシャイニングの間取りや、僕の自主制作など、
空間で考えるとわかりやすい
が、もっと抽象的な、例えばキャラクターの破綻や、ストーリーの論理的な破綻も。潜在的な違和感やその逆の感情も生むかもしれない
言われてみれば。みたいな共通項を、見る人全員に、誰にも言語化させることなく深層意識に植えつけることができるのが、理想的な演出なのだろう。
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