「蛍火の杜へ」

蛍火の杜へ_1
©緑川ゆき・白泉社/「蛍火の杜へ」製作委員会

この作品は結構前に見てから、ずっと心に残っているアニメだった

ただ、Dアニメストアから消えてしまい、その後長らく見れていなかった

が、最近になって復活していた。なので見た。

普段はネタバレ気にせずブログ記事を書いていますが、この作品に関してはネタバレする前と後で面白さが変わってくるものな気がするので、一応断っておきます。ネタバレありです。

よいアイデアを最大限楽しめる構成

この作品は45分ほどの尺しかない

原作は読み切りの漫画のようだ

個人的にはそういう短い物語が好きで、ルックバックやメモリーズなどのような、事前知識なしで、単独ですぐに楽しめる物語というのがプロポーションとして美しい気がするので、結構見ている

その中でも、特に好きなのがこの、蛍火の杜へだ。

内容は恋愛系だが、そこに、触れては消えてしまうという制約が設定されている

近づきたいのに近づけないというジレンマが、2人を切ない結末へと導く

このアイデアが素晴らしいのは言うまでもないが、この作品は構成によってそのアイデアを効果的に利用している

45分と短いので、そのアイデアだけで物語が良い感じのペースで終盤まで進んでいく

なので、余計な要素がない。さっぱりとした印象の作品に仕上がっている

ここに肉付けをしてしまうと、日常系アニメみたいになりすぎてしまうだろう

さらに考えられているのが、この作品が主人公の昔話のような形で語られている点だ

これはタイタニックや、異世界転生ものと同じような効果を生み出しているようにも思える

現実と陸続きの物語だということにすることで、ファンタジーでありながらリアリティのある雰囲気に仕上げている

子供のころにあった怖い体験、楽しい体験。今となっては現実だったのか夢だったのかわからない体験

そのフォーマットにこの作品のストーリーも当てはめている

これが単なる現在進行形の語り形式だったら、ここまで印象的かつ、リズミカルな作品にはならなかっただろう

この作品は一見、割と王道な展開のみの作品だと見せかけておいて、じつは気づかないところで細かい演出が働いている作品な気がする

夏祭りの伏線

森の中で行われる妖怪だけの夏祭りがこの作品のクライマックスだが、その話はだいぶ前から伏線として出てきていた

村の人が昔、迷い込んでしまったというような小話が出てくるが、それはクライマックスの伏線になっていた

クライマックス。ギンが消えてしまうとき、通りすがりの子供たちに触れられていたが、その子供が実は人間だった

というのは、たまに祭りに迷い込む子供がいるという話が伏線になっている

クライマックスについて

クライマックスがまた良い。

ギンと蛍だけでクライマックスを迎えると思いきや、不意な形で、何の準備もなしに、知らない子供たちによってギンが消える

満たされて終わる恋愛ではなく、その前に終わってしまう恋愛だ

ここがまた儚い雰囲気を演出している

消えてしまうギンを抱きしめる蛍だが、その感情が短時間で喜びから悲しみに代わっていく様子もよい

この急な感情の変化が感動を呼ぶ

一瞬でこれだけの感情を動かしてくるクライマックスもなかなかないと思う

ちょっと惜しいと思ったところ

尺が44分で、長編というよりも、ショートアニメというような印象の作品だ

なので、あの最高のクライマックスの後、すぐ、成長した蛍のパートに入ってもよかった気がする

あの後、妖怪たちが話してきたり、少しだけ展開があった

今の状態でも十分短い展開にまとまってはいるが、個人的にはそれすらもカットして、あの余韻のままエンディングに入っていくほうがよかった気がする

これが90分くらいのアニメ映画であれば、きちっと終わらせないと終わった感が出ないが、この作品は印象としてはショートアニメだともとらえられる体感なので、むしろ、クライマックス後すぐに終わりというのでもよかったのでは。

と思った

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