七人の侍を見た

七人の侍を見た

実は、黒澤明監督の映画を見るのは初めてだ

日本映画史上最高傑作ともいわれている作品なので、期待してみた

感想としては、やはりすごく良い出来で、日本映画最高傑作ともいわれるだけのことはあった

が、たぶん、今まで日本国内で上映された映画をすべて見たらこれ以上の作品もあるのでは、という感じだった

今まで見た映画の中で、良いと思ったのは、その男凶暴につき、ソナチネ、シャイニング、タイタニック、君の名は、という感じだろうか

そのラインナップに七人の侍は十分に加わる。それくらい良かった

が、気分によってはタイタニックも良いし、君の名はも良いし、北野武監督作品も良いし、という感じだ

画面のレイアウトについて

画面のレイアウトに一番感動した

レイアウトというか、コンテの作り方。音も含めた見せ方の面は本当にすごい

その点においては今まで見たどの映画よりもすごい気がしたし、それを70年も前に映像にしているのは常軌を逸脱するくらいすごい

人質を取って立てこもっている盗人が斬られて倒れるシーン。倒れる瞬間だけ無音になって、しかもスローモーションだ

その見せ方は今となっては無くはない見せ方だが、逆に言えば、70年もたって通用する見せ方を日本の映画でやっていたことはすごいと思った

現代の映画でやってもすごい演出だと思うのに、やはりそういうところは最高傑作と言えるくらいすごかった

それ以外にも、あのあたりのシーケンスは川の音で人の声がかき消されているような見せ方だった

見知らぬ人々が何かを話している。何を話しているんだろう? という、観客の疑問を邪魔しないような音の作り方だ

それでいて、しっかりとした表現の一つになっている

この映画は脚本を見せるだけではなく、芸術的な雰囲気をまとった、劇的な見せ方が多くあった

個人的に思うのは、カメラの画面の中に被写体を収めるのではなく、被写体を陳列する。というような考え方で映画を撮るべきだと思っている

これは僕の完全な趣味かもしれないが、キューブリック監督など、個人的に凄みを感じる監督の画面は、画面を3Dではなく2Dとして、図形としてとらえている気がする

そういう見せ方が黒澤明監督の画面にもあった気がした

村の娘が土壇場で若い侍と交わった後、泣き崩れる父の向こうにこれまた泣き崩れる娘の姿が同じ画面に収まっていた

あの画面は図形として美しく配置されていた

今思えば、あの構図では、父さんと娘。結構な距離の差があるだろうからピンボケせずに撮影するのは難しかっただろう

この作品は望遠レンズの使い方が上手だったのかもしれない

70年も前に、夜の暗い場所で、あれだけ広範囲にピントを合わせる望遠レンズなんてあったのだろうか。

なければあの画面にはなっていないからあったんだろうな

やはり、制作費が普通の映画7本分なだけはある

脚本について

脚本についても面白かったが、それに関しては上の中くらいの面白さの脚本だった気がする

活劇物としては優秀で、今の時代に見ても楽しめる時点ですごいものだというのはわかる

キャラクターもわかりやすく、敵と味方の戦いという、シンプルな構図もわかりやすい

エンタメ作品として成功しているし、絵のクオリティも高いので、文句の付け所が無いような脚本だ

ただ、だからこそ、期待を裏切る感じはなかった気がする

画面のレイアウトにあった凄みが、脚本にはなかったので、そこは少し残念だ

とはいえ、凄み=映画の価値というわけでもない気がするので、これは単なる個人的な趣味なのかもしれない

エンタメ映画としてみるならば最高の脚本ともいえるかもしれない

映像のクオリティについて

映像のクオリティに関しては、あまりこういう映画を見る人間ではないのでそこまで断じたことが言えるわけでもないが、少なくとも、大満足できるクオリティだった

落馬する武士のところなんて、本当に怪我をしていないか心配してしまうくらいの臨場感だ

というか、古い映画にありがちだが、明らかに怪我をしながら撮影してそうなカットがたまにある

白鯨という映画も、水が打ち付ける中ぐちゃぐちゃになりながら撮影していたし、

猿の惑星も。肌が露出しまくった衣装で人の背丈ほどある草むらの中を走るカットがあった。あれはだいぶ、切り傷がついたと思う

七人の侍も、昔ならではの危険な撮影が多くあり、そのために実現した臨場感なのかもしれない

実際、調べてみたが、骨折した人も何人もいるし、背中に矢が刺さった人もいたらしい

今ではそういう場面になると、VFXでやってしまおうというようなことになる

そうするとやはり、画面が寂しくなってしまいがちだ

七人の侍では、危険を顧みず撮影しているからなのか、そういう安っぽさは感じられなかった

一部、刀で斬られる人が作りものっぽかったり、刀の先でつついただけで人が倒れたりというのはあったが……、

ただ、そういて言うとこの作品の臨場感。セットとしての画面のクオリティはとても良かったと思う

ラブシーンについて

先ほど、脚本は上の中くらいと書いたが、ラブシーンの入れ方を考えるとやはり、脚本もすごいポイントがある気がした

この脚本でラブシーンが無かった場合を考えると、それはもうテンプレみたいな作品になってしまう気がした

ただ、そこに性的なテーマを加えることによって、それをこの映画の後半の柱にすることができている

つまり、裏のテーマとして、2人の愛がある

表はアクション活劇で、裏には愛のテーマ。

この2本立ては最高というわけではないが、この脚本を一つの美しいプロポーションにしているという点で、割とテクニカルなことだな、と思った

総じて言うと

総じて言うと、やはりとても良い作品だ

映画の凄みも十分感じられる作品だったし、現代に見ても楽しめる作品になっていた

最も好きな映画の一つともいえる

ただ、この記事でも書いた通り、70年前でこれはすごい。というような見方でこの映画を見た結果、最高傑作という答えが出るというのもまた事実だ

つまり、それは映画の凄さではなく、映画の時代背景を踏まえた凄さであって、映画の凄さではない

単に映画を語りたいだけならばそういう見方でも良いのかもしれないが、それは相対的に映画を見た評価であって、僕のように。映画監督になりたい人が分析するのであれば、絶対的に映画を見るべきだと思った

そして、絶対的にこの映画を見るならば、最高傑作ではない気がする

この作品が日本映画の歴史に残るレベルの作品だという事実を踏まえたうえで評価するのであれば、この映画は間違いなく日本映画の最高傑作だろうが、個人的には、映画そのものの出来としては、断じて最高傑作だと言える感じでもない

とはいえ、そうであってもこの映画は群を抜いて良い映画だ

今後、ほかの黒澤明監督の作品も収集したい

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