とても良い映画だった
高校という雰囲気もリアルだったし、構成もユニークだったし、ストーリーも面白かった
桐島は関係ない
この映画において、桐島は全く出てこないし、映画のメッセージとしてはほとんど意味をなしていない
桐島が部活をやめるのはどうでもよく、単なる話のきっかけでしかない
いや、むしろ、意味を成していないことに意味があるのかもしれない
直接的に関係のないことで、ここまでの大ごとになってしまうということが大事なところだ
スクールカーストというものをテーマにしているようだったが、それは宙に浮いたような根拠で形作られる
それを表現したいのであれば、話のきっかけとなる事件はスクールカーストとは関係あってはならない
桐島が部活をやめるというのは多くの人にとってどうでも良いことだし、映画部の人たちなんて、桐島という人間を知らない可能性だってあるくらいだ
そういうどうでも良いきっかけで右往左往する様子を楽しむ映画だ
楽しみ方がほかの映画とは違う感じがした
高校の雰囲気について
どこの高校でもこういう雰囲気なのはわからない
が、高校特有の、なんとなく流れている時間のような雰囲気が強く伝わってきたので、そこは良かった
セリフも、台本に書いてあるセリフを読み上げている雰囲気ではなく、本当に会話しているような、そういう雰囲気がしてよかった
屋上で乱闘するシーン
あのシーンはこの映画でも一番盛り上がるところで、とても良かったが、反面、良くないと思うところもあった
あのシーンは途中から、特殊メイクなどが本格的になり、臨場感のあるゾンビ映画風の映像になるが、あれはおそらく、映画部の生徒の妄想なのだろう
取っ組み合いになった後、乱闘になり、その様子が自分の撮りたいものだと気づいて、無我夢中でカメラを向けた
本当は特殊メイクも血のりもないのに、あたかもそれがあるような映像がその生徒の目には映っていた
ただ、それは単なる妄想であって、実際はそんなことはなかったという小さいオチだ
この見せ方はとても面白かった
そもそもこの映画は構造自体がユニークだが、このシーンの臨場感は別の意味でユニークだった
おそらく、抑え込まれていた人間の頭の中の妄想という、抽象的でカメラに映らないものを映像にしているから面白いのだろう
これが、スクールカースト上位の人間の妄想だと、つまらない
現実と妄想が乖離しているという、スクールカースト下位の映画部部員だからこそできる見せ方だ
そういう点は良いと思ったのだが、ここで当てられている音楽に、吹奏楽部の演奏を入れていたのはちょっと意味が分からなかった
確かに、あの絵で吹奏楽部の音楽はマッチしていた
ただ、あの場面が映画部員の妄想を形にしている場面なのであれば、少なくとも吹奏楽部の音楽ではないのでは?
あそこに吹奏楽部の音楽を充てるという発想は、この映画自体の監督をしている人のものだ
ここがちょっと紛らわしい気がした
映画の中の監督の脳内妄想を見せる絵に、この映画自身の監督の演出意図を合わせてしまっているので、音と絵で伝えたいものが違って見えた
確かにあの場面で吹奏楽部の音を使ったのは演出としては正解だろう
ただ、本当にその展開に沿った音を入れるのであれば、別のものにすべきだ
……とは書いてみたものの、確かに。あの吹奏楽部の音よりもあの場面にマッチした音は無いかもしれない
音楽なしで見せるか、それともあの映画部員が自主制作映画で使ってそうな安い音源にするか、
どちらにせよあの吹奏楽部の音よりは迫力に欠ける
本当にアーティスティックな映画ならば、あの場面で吹奏楽部の音を使うことは無いのだろう
ただ、ユニークではあるが、一応この映画もエンタメ映画だ
あの見せ方は結局正解なのかもしれない
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