映画、「炎628」を見た

「炎628」を見た

今まで見た中でも特に衝撃的な作品だった

全体的なストーリー

ドイツ兵を醜悪に映している作品で、プロパガンダ映画のようだ

僕はもちろんこの時代の当事者ではないのでわからないが、たくさんの白ロシアの村が焼かれたという事実からも大量虐殺があったのだろう

そんなことをしたドイツ兵が徹底的に残虐だった

表立った人間の悪、残虐で容赦ないところも描いていたし、その裏にある裏切り、自分だけ助かろうとする汚さまでも描いていた

単なる残虐性だけでなく、仲間割れまでも描くというのはやはり、ソ連映画ならではの強い意志を感じた

ただ、クライマックスではヒトラーを擁護しているともとらえられる気がした

怒りに身を任せてヒトラーの写真を撃つ主人公だが、そのおおもとには無邪気な子供と母親がいた

その子供を撃てないというのはどういう意図なのか、それは想像するしかない

僕が感じたのは、

最初はみんな子供なのに、大人になるとこんなにも残虐になったり、憎しみあったり、汚れていく

その結果として戦争がある。

無邪気な子供を残虐なヒトラーにしてしまったのは戦争だ

だから、この映画で見せられたすべての悪は戦争というシステムにある

ということを伝えたかったのでは

というか、僕はこの映画からそういうものを感じ取った

最後の森の雪について

最後、森の中を進むパルチザンだが、森を抜けると少し雪が降ったような感じになっていた

これはおそらく、ソ連がこの後ドイツを退けたという、勝利を予感させる演出なのだろう

第二次世界大戦時、ソ連はこのあと、北に退き、停滞したドイツ軍に反撃して国を守ったという事実がある

確か、昨今のウクライナでも同じようなことが起こっていた気がする

そういうのは独ソ戦でも起きている

おそらく最後の演出はそういう、歴史的事実を予感させるものだったのだろう

北に退いているということを伝えている

耳鳴りの下り

序盤に爆弾が投下され、耳鳴りでしばらく音が聞こえない。

いくつかの戦争映画で何回か見た表現だが、この映画の場合はその表現に費やす時間が長かった

耳鳴りでキーンとなっているときの、銃声がぼやけたり自分の声が頭の中に反響したりというのはそうだし、

そこからしばらくは音が少し変な感じになっていて、それが徐々に映画の中から消えて言っているという感じだった

これは、聴力が回復していった過程を表しているのだろう

そういうものを長々とやってしまうとエンタメ映画としては成り立たなくなってしまうのでなかなかできたものではない

悪く言えば観客を置いてけぼりにする表現で、大衆向けではない

ただ、個人的には大好きな表現だった

その図々しさと、見ていて楽しい感じを両立できる作品を作ってみたい。

動物の扱いについて

いくら映画とはいえ、牛を本物の機関銃で射殺したり、死にゆく牛の眼球の動きをアップで写したり、立ち上がれなくなるほどに馬を痛めつけたり、羽化直前の卵を踏みつけてつぶれた雛の様子を画面に映したり、

というのは良くないと思った

個人的に動物が好きというのもあるが、

そもそも、領土拡大のために人を殺す戦争をテーマに撮るのであれば、それを伝えるために動物を殺して映画を撮ってはいけないのでは?

戦争の本質に理不尽な暴力があって、それはダメなことだ。

でも、動物への理不尽な暴力はやります。

というのは、個人的には少し違う気がした

これは、人間を殺すのと動物を殺すのは違うことか、

という問いなので戦争とは関係なく、別問題だが、

少なくとも、この映画で伝えていることは動物を殺さないと伝えることのできないメッセージではない気がしたし、そうでなくても、小道具とカメラアングルを工夫すれば同じようなものを伝えられる気がした

ただ、ヨーロッパは動物に対する考え方が日本とは違うようだ

家畜文化が古くから根付いている地域なので、動物に対する見方が日本人の僕とは違うのかもしれない

世界大戦もそういう考え方が生んだのかもしれない

カメラアングルについて

シンメトリーで表情を印象的に見せるカットが多かった

カメラを不用意に動かすこともなく、そういうものは個人的にすごく良いと思った

説明するための画面なような気がして、凄みが出ている

伝えているものの強度が強いので、そういうテーマとも相まってとてもメッセージ性のある雰囲気になっていた。

まとめ

とても良い作品だった

途中で本物だと思われる死体の映像が出てきたり、耳鳴りの長い下りだったり、

とても思想を感じる映画だった

ただ、絵の美しさ、音のリアリティも相まって最後まで目が離せない映画になっていた

世の中には断片的な映画もたくさんあるくらいなのに、最後までしっかり主人公がいて、ストーリーもある。それでいてこの強度を保っている

というのがこの映画が評価される所以な気がした

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