少し前に話題になった映画、オッペンハイマーを見た
原爆という題材なのでそもそも日本人が良い気持ちで見れるものではないというのはそうなのだが、
それを踏まえても、なんだか、エンタメ題材の一つとされている感じはあった
とは言ったものの、実際の事件をもとに映画を作るなんてこと、太古の昔から行われてきたことなので、今更どうこう言うべきでもないのかもしれない
タイタニックだってそうだ
あの映画は僕も大好きだが、実際に人が大勢亡くなった事故をもとにしているのだから、オッペンハイマーを見た日本人みたいな気持ちになる人はいるのだろう
ここではあえて、嫌な気持ちというのを赤裸々に語るが、
同時に、エンタメが売れる時代である以上、すべての人間に配慮した映画なんてものは存在しないので、僕が言うことはナンセンスだというのも自覚している
戦争映画ではない
そもそも戦争映画として見ようとしている時点で変かもしれないが、
僕がここで思い出したのは、炎628という映画だ
あの映画はナチスによるソ連の村々への虐殺の様子を描いた作品だが、
映画の終盤に挟まれる実際の戦争の様子、音声、
そこで知る、敵であるヒトラーの幼少期まで描いている
あれはソ連の映画なので、被害者側が制作した映画だ
被害者が作る戦争映画は基本的に本物だ
僕は別に、大量の映画を見た人間というわけでもないので、炎628しか例に出せないが、
なんとなく、世の戦争映画は被害者側が制作した物が名作となるケースが多い気配がする
そう考えると、オッペンハイマーは被害者側の映画ではなく、どちらかというと加害者側の映画だ
だから、当事者としての映像に込めた思想がない
どうしても、書かされた反省文みたいになってしまう
仮に、いくら見せ方が上手でも、どこかで映画にかける思想が無いのではと疑ってしまう
そう考えると、オッペンハイマーで広島長崎の被害だとかを取り上げるのは間違っている
それらを変に取り上げても、中途半端な戦争映画の出来損ないにもならないので、そうしなかったのだろう
世界観として、この映画は原爆を描いたものではなく、オッペンハイマーを描いたものだ
中途半端な戦争映画にならなかったのは良いとは思うが、エンタメ映画になってしまっているという点で、やはり手放しで喜べる映画ではないと思った
エンタメ映画として
エンタメ映画と言っているが、そこまでエンタメ映画でもない気がする
アラビアのロレンス的みたいな伝記映画だが、アラビアのロレンスほどのアクションもないし、背景の映像美もない
伝記という大枠に、人間ドラマで物語としてまとめた感じの作りだ
おそらく、すべて理解できていれば楽しめるものなのだろう
実際、後半の、仕組まれた簡易裁判みたいな展開は見ていて楽しかった
英語でのスピーディーな展開なので、あまり理解できなかったし、そもそも人の名前を覚えるのも大変なので結構置いてけぼりにされた
が、後半の雰囲気はなんとなくだがハラハラドキドキで楽しかった
たぶん、オッペンハイマーという人物は、太平洋戦争をアメリカ側から学んでいるアメリカ人にとっては、親しみや知識のある人物なのだろう
そう考えると、オッペンハイマーという、教科書にも載っているような人物の伝記映画としては、アメリカ人から見たら楽しめるものだったのかな、とも思った
題材としてはやはり、アクションが無かったり、派手なシーンが無かったり、若干単調になりがちなものではあるとは思うが、
ただ、トリニティ実験の緊迫感などは映画向きのエピソードだと思った
そういうハラハラドキドキの仕掛けは用意しようと思えばもっと脚色してでも用意できただろう
が、それをしなかったのはやはり、原爆というセンセーショナルな話題だからなのだろうか
題材として難しいところはありつつも、見ていて楽しめる映画になっていたという点では、やはりノーラン監督の実力なのかなとも思った
音が大きい
音で驚かすのは良くないと思った
トリニティ実験後の爆発音も、爆発した瞬間にほぼ無音になるという展開は良い
が、それがしばらく続いた後、いきなり爆発音みたいなのを鳴らすのは心臓に悪い
これは単なる僕のわがまま文句でしかないのだが、
例えば、爆発後の無音の中、砂漠にできた水たまりに伝う衝撃波が徐々に登場人物たちの元に近づいてきて、爆発音がする。
といったような、観客への配慮もある演出にした方が良い気がした
音を視覚化したほうが、徐々に近づいてくる爆音の不気味さを引き立たせるし、
雨上がりという状況も印象付けられるし、
爆発で不気味なのは、迫りくる爆音だ
衝撃波、来ます! みたいな感じだ
それを演出するという意味でも、徐々に迫りくる音を画面で伝え、見る人に準備させてから爆音を聴かせるというような風にした方が良かった気がする
ほかにも、どんどん音が大きくなってから、いきなり静かになる。というような、わかりやすい演出が目立った
音の大小は大事だが、個人的には、心臓に悪いものはお客さんに出すべきではないと思っている
いくらおいしくても、体に悪い料理を出しているようでは定食屋失格だと思うのと同じように、
見る人への刺激を抑えつつ、ハラハラドキドキさせるのが監督の腕の見せ所なのでは、と思った
Tweet
この記事をツイートする
Youtubeやってます!
作品発表、メイキング、解説もやってます
よろしければ高評価、チャンネル登録、よろしくお願いします
お仕事募集中です!
お問い合わせはツイッターのDM、またはお問い合わせフォームまで
お気軽にご相談ください
おすすめリンク
ブログ記事ジャンル

最新の記事
- 脚本における微分積分 (2025/03/28)
- 「N・H・Kにようこそ!」の感想 (2025/03/24)
- 「Blender Fes 2025 SS」にて、MCとして参加します! (2025/03/23)
- 『職種と用途で探せる Blenderアドオン事典』に寄稿させていただきました (2025/03/23)
- 作品作りにおいて大切なこと、潜在的な印象の操作。 (2025/03/17)
- 「月がきれい」を見た (2025/03/16)
- 世界で売れる作品 (2025/03/14)
- 白馬村、富山、名古屋などに行ってきた (2025/03/09)
- Astrid Engbergについて (2025/03/05)
- TrySailの10周年ライブに行ってきた (2025/03/03)
- 最近忙しい、なのであまり更新できていません (2025/03/01)
- プラネタリウムとsumikaのコラボカフェに行ってきました (2025/02/23)
- 人間ドラマを抜いたゴジラだ。 (2025/02/17)
- 「浅草キッド」を見た (2025/02/15)
- 「雑・前田真宏」展に行ってきた (2025/02/15)