果てしなきスカーレットを見た感想

どちらかというと悪い評判が多めなので見てきた

総じて言うと、確かに良くない部分もありつつも、わざわざ文句を言うほどのものでもない気がした

まず、絵に関しては最高レベルに良かった

僕は普段からイラスト調3DCGの研究や、ツール開発をいろんなところで行っているが、

今回のスカーレットの絵は個人的に求めるものに近い、今まで見た中でも最高レベルの3Dをメインにした映画だと思った

ただ単にクオリティが高ければよいというわけでもない

3Dというのは何もしないと情報量が飽和してしまう分、適切にデフォルメさせないといけない

絵的な点でもそうだし、時間的な点でもそうだ

水の動きや、こまぬきなど、そういった工夫が必要になってくる

ただ、文字にすれば簡単なことだが、実際やろうとするとそれはとても難しいことだ

そもそも、どこを省略し、どこを誇張するというのは、クリエイターの先天的なポテンシャルが必要とされるのと同時に、これまでの人生の中でいかに集中して作品を見てきたかの、積み重ねの領域でもある

その二つを兼ね備えた優秀なクリエイターがたくさん集まらないと、あの、2時間近くクオリティを保つ映像というものは生まれない

スカーレットの3DCGは、最近の映像に蔓延りがちな、思考停止した3Dルックではなく、信頼のおけるようなセンスを感じられた

そして、何よりすごかったのがそういった高度なデフォルメがされていながら、ほとんど写真素材みたいな情報量を持った素材があっても違和感のないレベルのルックに仕上がっていたことだ

例えば、焚火のシーン、

炎はほとんど写真素材なんじゃないかというくらいのリアリティで、コマ抜きもされていなかった気がする

普通、そんな情報量の多い素材を一つの画面に収めてしまうと、そこだけ明らかに違和感が出てしまうように思えるが、スカーレットの場合は全く違和感がなかった

じゃあ、それだけキャラクターや背景に情報量が多いのかというとそういうわけでもなく、ちゃんと、あの世界の空気感を感じられる質感に仕上がっていた

この両立を、見る人に違和感なく伝えている時点で、とても高度な映像だと思った

他にも、煙の表現、流体の表現、民衆の表現など、画面の隅々まで破綻なく描けていたのはすごいと思う

普通、映画一本見ればどこかで変な部分があるものだが、スカーレットの場合。そういったものはなかった気がする

ただ見逃しただけかもしれないが

ただ、悪い部分ももちろんあった

悪い部分といっても、実際のところ、問題のない映画なんてないので、揚げ足取りみたいになってしまうかもしれないが、

まず、構成については、すべてを見せすぎている感じがあった

スカーレットがなぜ復讐を企んでいるのか、というのもそうだし、事の顛末も、道中の細かな展開もすべて描いている

明らかに展開が多すぎだ

道中の展開なんて、なくても通じるものもあっただろうし、そもそも、スカーレットが恨みを持つきっかけとなった出来事だって、あんなにちゃんと説明しなくてよい気がする

たとえば、この作品はやたらと音楽が出てくるが、

だったら、その音楽が出てくるというのをこの作品の構成のテーマとし、音楽に載せてその過去を3分くらいでダイジェストに説明する

みたいな見せ方ができたかもしれない

アナ雪などは、この手法を使い、エルサとアナが幼少期楽しく過ごし、親を失い、心を閉ざし、と、おそらく10年近い月日を数分で、詰め込み感を出すことなく客に伝えることに成功している

スカーレットでも、そういう演出のアイデアはなかったのか、惜しい気がした

それを差し置いても、やはり展開が多すぎる

スカーレットは一つの展開で一つしか説明できていないようなのが2時間続く。という感じだったので、これだけ伸びてしまったのかもしれない

それ以外にも、なぜ死者の国にいるのかよくわからないキャラもいたり、聖が消えてしまうタイミングが明らかに泣かせるためだけに辻褄を合わせたようなタイミングだったり、

見せ方も、構成の教科書に載っているような、目新しい感じもなく、ただ予想の範疇に収まるような見せ方が続くような感じがしたし、

そういうところはやはり見ていて気になった

世界観について、

死者の国の世界観はとても良かった

あそこは精神世界的なところなのだろうから、具体的な説明も不要というとらえ方もある

なぜ野菜があるのか、というのは突っ込まれがちなところなのかもしれないが、個人的にはあの世界はそういうものなのねという解釈なので、そこまで気にならなかった

ただ、なぜ馬やラクダがいるのか、なぜ人種が偏っているのか、日本人が聖しかいないのか、については少し気になった

死者の国なら、もっと人種も文化も時代もシャッフルされた状態にならないのだろうか

現代日本から来たのは聖だけだし、そもそも日本人っぽい人も聖しかいないし

絵的にもコンセプト的にも脚本的にも、聖だけなぜいるのかよくわからない感じにはなってしまっていた

とはいえ、背景の美しさは本当に圧倒されるものがあった

圧倒的なスケール感もそうだし、画面の書き込みもすごかった

世界観としても、荒涼とした大地、何もない世界観は死後の変化のない状態を象徴しているのだろう

そういう雰囲気は僕も大好きで、サニーボーイやドラゴンボールみたいな心地よさを感じた

総じて言うと

2時間は長かったが、映像美という点では明らかにトップレベルだし、その映像美に追いつけてはいないものの、内容も、絶望的な破綻はしていないので楽しめた

ただ、その映像美に感心する反面、そのリソースを10分の1でも若いクリエイターに分けてくれたら、これを上回る映画が誕生していたと思う

そのリソースを僕にくれとは言わないが、

やはり、ヒットを一度飛ばした監督にはお金もクリエイターも集まってしまうのだな、

最初の作品を作るのが大変だな、

作っているうちに日も暮れてしまうのだろうな、

と、若干、寂しくなった。

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