とても良い作品だった
同時に、勉強にもなる作品だった
まず、舞台がだいぶ抽象的だ
北極百貨店と言いつつも北極にあるわけでもないし、そもそも動物がお客さんにいる時点で結構なファンタジーだ
そういう、抽象的な設定に合わせるような形で、デフォルメされた作画が良い仕事をしている
脚本と絵の解像度は一致していないといけない。というのは大前提だが
この作品の物語や世界観はだいぶ抽象的でありながら、それを違和感なく伝える絵柄も完ぺきだった
絵についてはほかにも、線が少なく、ただ、安っぽくないという点が好印象だった
全体的に、和紙のようなテクスチャを載せているため、この質感になっているのかもしれない
これにより、線が少なくても、印象として安っぽくなっていない
この工夫は勉強になった
あと、展開に関しては、良くも悪くも、テンポが一定だという印象を受けた
個人的にはそういう映画は大好きだが、
悲しいことに、わかりやすい見どころが求められる昨今においては、ヒットにつながりにくい特徴となってしまっている
映画としての盛り上がり、ハラハラドキドキ展開、そういうわかりやすい感情の上下がこの作品には少なかった
数個の話を織り交ぜるようにして盛り込むことで、このような印象になっているのかもしれない
映画自体は70分ほどあるものだが、体感時間的にはショートアニメーションを見ているような感覚になった
この作品は個人的にはとてもレベルが高く、楽しめる作品だったが、その割にはヒットしていない印象だ
おそらく、言語化が難しい部類の楽しみが連続するような作品だからだと思う
なんとなく良い話だけど、うまく説明できないから、周りの人にわざわざお勧めする作品という感じでもない。という感じかもしれない
寝ぼけていてもわかるくらいの展開、寝落ちしていても次の瞬間には笑えるような単純なギャグ、大きな音、きれいな絵、見どころを全部説明してくれるセリフ。
今の時代、そういう要素がない作品はなかなか話題にも上がらない
が、個人的には、それに反する「北極百貨店のコンシェルジュさん」のような作品は大好きで、こういう作品こそ残るべきだと思っている
そして、もう一点、この作品に登場するお客さんが全員絶滅してしまった生き物で、それをもてなすコンシェルジュは人間、そして、百貨店は娯楽目的の消費の象徴、
そういう、割と強烈なメタファーが感じられるので、良かった
世界観でメッセージを語る系の作品は基本的に名作だ
ゴジラだって、水爆実験から生まれたという設定だけで、作者の言いたいことを語っている
ゴジラの世界で登場人物たちが家族やら恋人やらを語るのは正直、本題ではなく、
ゴジラという設定が存在する時点で作者のメッセージになっている
その点、今回の「北極百貨店のコンシェルジュさん」でも、百貨店という設定で人間の大量消費、娯楽目的の乱獲、環境破壊的なものに対するメッセージを伝えつつも、
それを主軸にするのではなく、あくまでこの映画で楽しむのは個性豊かな動物たちとコンシェルジュとのやり取り、そちらに向けられている
ここで、登場人物たちが過度にセリフにしてしまうと、説教になってしまう
この作品は、割とダークで、今生きている人間全員に問いかけるような内容でありながら、見る人を不快にしないという、ジブリ的な伝え方をしている点がすごいなと思った
メッセージやテーマのような、お金を生まない要素を排除することでヒットを狙う風潮の中、
この作品は、しっかりとした主張がありつつも、見る人が楽しめる作品を作っているという点でとても良かった
こういう作品こそ、本当に意義のあるアニメ文化として増えてほしい
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