我々は宇宙人 を見た

新宿で一日4本程度と、そこまで多くない上映数だが、その日は満席のようだった

内容としては、とても良かった

最近見たコンテンツでは断トツで良い

最初、ティザーを見たとき、僕は基本的にロトスコープが嫌いな人間なので、この作品もあまり好きではなさそうな印象だったのだが、

いざ見てみると、とても良い作品だった

ロトスコープ嫌いとは言いつつも、ロトスコープを活用した作品は基本的に好きなことが多い

ロトスコは実写をトレースする技法だが、それ自体は情報量をそぎ落としたいのか、維持したいのか、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような技法なので、好きではない

が、この技法を使った作品に良作が多いのは、その技法が伝える生生さのようなものと、アニメの絵としての表現力が同居しているからだと思う

我々は宇宙人を見ていて、惡の華という作品を思い出した

惡の華も、悪事と青春の物語だが、それをロトスコによって描くことで、アニメ絵では伝えられない生々しさを表現することに成功している

我々は宇宙人についても、同様の理由で、その生々しさがうまく表現されていた

惡の華よりも線が多いので、作るのが大変だったと思う

この作品の監督は、29歳

しかも、制作会社で見ても初の作品だ

なぜ、2時間の長編を、初作品としてオリジナルで作れたのかはこれから調べてみたいと思う

監督が29歳というのは妙に納得した

なぜなら、明らかに僕と同じ世代を生きていた人が作ったモチーフが多数登場するからだ

デオキシスのシールなんて、あれと同じものを僕も持っていた。ポケモンパンについてくるやつだ

がんこちゃんが学校で流れてテンションが挙がっているところとか、あるあるだった

あれほどまでの解像度の平成小学校描写は、やはり、20代後半の人にしか描けないだろう

あとは、舞台となっている街が自分の地元のような気がしてならなかった

しかし、それも監督の意図らしく、みんなが地元だと錯覚するような情景にした、らしい

確かに、東京近辺の郊外はどこもあのような景観な気がした

自分は勝手に、高速道路は京葉道路で、谷津干潟とか、習志野、稲毛、船橋あたりの景色なのかなと確信していたのだが、どうやら違うようだ

そういう仕掛けもあり、懐かしい気分になる。自分の小学校時代を思い返すような映画だった

画面が意味するものについて

冒頭の、雨が涙のように映っているというのはそうだが、

他にも、上手に意図をモチーフに落とし込んでいるのが印象的だった

非行に走りつつある翼が鼻血をトイレットペーパーで拭うシーン、

鼻血という、過去の嫌な思い出を払しょくしようと、トイレットペーパーをめくるが、染みついた鼻血はなかなか消えない

消したいのに消えない。それを躍起になって消す。消そうとする。というのを、トイレットペーパーを用いて上手に表現している

そこから続く、水たまりに映る警官の姿も。最高の演出だと思った

あの、公衆トイレのシーンは、今まで見たアニメ映画の中でも、最高に近い出来栄えだったと思う

問題は解決していないのでは、

見返したいくらい良い作品だったが、やはり、気になってしまう部分はある

最終的に、翼と暁太郎は和解している感じになっているが、それは和解できないのでは? と思ってしまった

結局、暁太郎の人生を壊したきっかけは翼だった気もする

結局のところ、こういったいじめというのは解決することはできない

だからこそ、小学校時代、幼少期時代のことなんて、10年以上たってしまえば些細なことだ、というメッセージなのかもしれない

それについては僕も大いに共感できることで、僕の好きな映画、キャッチミーイフユーキャンも、そういう印象を得ることができるので大好きだ

が、それにしても、暁太郎は失ったものが大きすぎないか? と思った

せめて、一度落ちぶれつつも、回復し、一般的な生活はできているが、未練やトラウマに悩まされ続ける。くらいにしておいたほうが良かった気がする

あとは、翼との決着をきっかけに。暁太郎の未来も開けるとか、そういう仕掛けにすれば、納得しやすいハッピーエンドに近づく気がした

積極的にはチューニングしていない点は、とても好きだった

これは単に、この作品を応援したいというような気持ちだが、

この作品は、最初から最後まで、人を笑わせようという気配が感じられない作品だった

どちらかというと、面白い作品ではなく、興味深い作品だった

個人的にはそういう作品が大好きで、むしろ、メジャーに売るためにとって付けたようなギャグを盛り込む風潮は良くないと思うし、

それがエスカレートすると、伝えたい何かを上書きしてしまうので、コンテンツとしてのレベルも落ちてしまうと思う

その点、この作品は、メジャーに売らないといけないという窮屈さを感じさせない作りなので、良かった

先ほども言及した通り、これだけ手数を盛り込んだ技法で、2時間近い映画を、29歳の監督の企画で、スタジオ初作品、オリジナル作品で形になったという事実が信じられない

ヒットで回収する前提で作られた企画でも、お金を出してくれそうな人が現れ無さそうな状況なのに、

それを、ここまでメジャーに媚を売らない絵柄と脚本で映像化してしまったというのは、何か仕掛けでもあるのだろうか、どういう事情で映像化できたのだろうか

自分も最近、脚本や企画を考えているが、やはり、メジャーに刺さるためにいろいろな要素を入れないといけないというのは窮屈だなと感じる

まだこの作品は公開して数日、新宿でもそこまで多くない上映数だが、確実に見ている人に届いているし、評価も高い

メジャーに媚を売っていない。単純に物事の展開で面白さを表現しているこの作品は、個人的に応援しているし、

こういう作品がヒットして、大勢が劇場に足を運ぶような結果になるのであれば、

僕ももう少し、世の中のことを好きになれると思う

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